お使いのブラウザはバージョンが古いため、サイトを快適にご利用いただけないかもしれません。快適にご利用頂くために、今すぐブラウザをアップグレードしてください。
Webフォントが読み込まれていないため、サイトを快適にご利用いただけないかもしれません。快適にご利用頂くために、Webフォントを有効にしてください。
「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)
「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

Instagramの海をサーフィンしていくなかで、衝撃的なアカウントに遭遇した。アカウント名は「_virtual_bitch_(バーチャルビッチ)」。サイバー感溢れるフィードに並ぶ、個性的なファッション。ジェンダーレスやLGBTなどが取り上げられる昨今、彼には性別の概念がはなからないように見えた。大阪の高校生(取材当時)だという彼は、明るい髪色に奇抜なファッションに身を包み、何を考え、どんな未来を見ているのだろうか。

大阪の繁華街・心斎橋近くにある若者の街、アメリカ村。通称アメ村は、原宿のようにトレンドに敏感な若者たちで賑わっている街だ。アメ村の待ち合わせ場所のメッカである三角公園に現れた彼は真っ黒のファッションに高いヒール、肩で切りそろえられたネオングリーンのボブヘアーで現れた。

ー名前はなんて呼べばいい……?バーチャルビッチくん?

「あ、それはアカウント名で、名前は魔主って書いて”ましゅ”って読みます。髪の毛がマッシュルームヘアーだった頃に、『めっちゃマッシュやん!』て周りに言われて、そこから。意外と気に入ってるんですよね」

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

「最近18になって、今は高3です。(取材当時)去年まで普通校にいたんですけど、留年しちゃって高3から通信制高校に通ってます。アメ村のアパレルでも少し前からバイトを初めて。アメ村のDOGってお店なんですけど、インスタで見つけてくれて声かけてくれて。去年までは制服着て、化粧もがっつりして高校通ってました。髪の色は校則があったので普通だった。中学校からそんな感じだったけど、いじめとかもあったことないし、わりと誰とでも仲良くて受け入れてくれてますね。周りに恵まれてるなって思います」

肩で切り揃えられたボブヘアーの髪型に、丁寧にほどこされた個性的なメイク。ヒールを鳴らしながら、よく遊んでいるというアメ村の道を闊歩する彼の姿はとても目立っていた。その姿は凛としていて、周りの目も、男だ女だなんていう隔たりも、存在しないように思えた。

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)
魔主くんのInstagram(@virtual_bitch)

ー魔主くんは自身の性別についてどう思っているの?

「自分は自分のことを男とも女とも思ってなくて、性別は自分自身。強いて言うなら魔主ですね!(笑)『性転換せえへんの?』ってたまに聞かれるけど、そういうのは一回も考えたことはなくて。この状態が生物として作られたもともとの形であって、それを変えようとは思わない。いまの見た目は世に言う女の子みたいだけど、自分のマイブームがこれなだけであって、唐突に髪を短くしたい時もあると思うし、ふわふわした格好したいこともあると思うし。そのときのなりたい自分になってます」

「ちっちゃい頃から「男やからこうしないと」とか「女やからこうしないと」っていう概念がなくて、好きなものは好きで生きてたんですけど、初めて幼稚園で「あ、自分はちょっと変わってるんかもな」って感じでした」

小さい頃は体が弱く絵を描いたり映画を見たりして過ごし、親が本や音楽を聴かせてくれた、と語る魔主。いまのファッションにはそうした幼少期に吸収してきたものから受けた影響もあるという。いまでも絵を描くのが好きだという彼は、将来は自分のファッションブランドやコスメブランドを立ち上げたいと話す。自信に溢れているように見える彼は、どんな思春期を送り、今を形成していったのだろうか。

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

ー小さい頃はどんな子どもだったの?

「自分の父が少し厳しいタイプで、ちっちゃいころは厳しく育てられてました。でも習い事も色々させてくれてて。反面、親の言いなりになっているみたいな部分もあったり、周りに気を使ってたり、人の顔色を伺ってました。小学校低学年から高学年に上がる頃は、一番人目を気にしていましたね。スポーツ好きじゃないけど友達に合わせてやったりとか、本当は絵とか音楽が好きだけど真剣にやらなかったりとか。とにかく”普通”になろうと必死でした。小4くらいから、『人間はこういうもの、男はこういうもの』みたいな価値観ができてくるじゃないですか。自分もそうなっていて、周りに合わせようとしていました。”こういう人間”ってカテゴライズされたくないけど、周りと話も合わないし、一番は1人でいるのが楽で」

変、を恐れて周りの目を気にしていた小学生時代。やがて抑えていたものが爆発していく。

「そうやって自分を抑えながらも「子どもやからこうしなあかんとか、大人やから女やから男やからとか誰が決めたん? 人生一度きりしかないのにそんなんに囚われてる人見たらもったいないっていうか、それ面白いん?」ていうのは常に思っていました。小6くらいから、他校とか同じ趣味の友達が増えていって。やっぱり自分の好きなことをしてるのが楽しいって改めて実感して、それから自分の中で押し込めていた何かが爆発したって感じです。その頃が一番親と喧嘩してました。自分にとっても自分探しって感じでした、当時は。中3になって進路どうする、ってなってちゃんとしないとあかんな、って思って。公立にいくか、服飾の専門にいくか、留学するかの選択肢で、目的もはっきり決まってないのに留学するのもなって思って公立の高校に入りました」

「昔は、自分は恵まれてる、と周りに言われてもわからなくて。でも、大きくなって色々な人や友達と関わるようになって家族がいて、自由なことをさせてもらえているこの環境は当たり前ではないと気づくことができました。世界は新鮮で知らないことが広がっていました。ずっといい子ちゃんしていたら、その時のまま止まっていたと思う。いろんな世界が観れた。視野が広がって自分はすごく恵まれてたんだなって思ったし、両親を尊敬できるようになりました。」

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

「当時は父親が単身赴任で家にいなくて、たまに家に帰ってきたら息子が激変していてほんまに驚いてました。母親と父親は自分がいないところでたくさん喧嘩をしていたと思います。一番自分が変わっていく瞬間を母親は見ていて、母親は一番の理解者でした。2019年3月に母親が亡くなったんです。高校1年生の夏に母が病気になって、高3の夏くらいまでは家事もできていたけど、闘病生活に入るようになってそこから父親が家事をするようになって。その頃から、父親は僕のことを理解しようとしてくれてました。父と関わるようになって距離が縮んでいきました。ほんまに最近ですね。時間を共有したり会話をすることはとても大切だと感じました」

自分の個性を押さえつけることをやめ、自分を貫き通すための道を切り開いた魔主。そんな自分を一番理解していた母の死を乗り越え、自分の未来をさらに切り開こうと、東京の服飾大学へと進学することを決めたという。

強さと自信に溢れているように見える彼だが、それは意図してやっていることだと話していた。自信がないように見えるような隙は出さない。それが彼のモットーだという。それこそが彼の芯であり、Instagramからも感じられる人を惹きつける魅力なのだろう。
とはいえ、誰もがそんな強さを身につけることは難しい。様々な意見がSNSで目につき、心無い言葉も飛び交う。ルッキズムやセクシャルへの偏見も根強く残る日本社会の問題も根深い。彼はそんな時代の流れをどう見ているのか。

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

ーようやく少しずつ日本でも多様性を認める風潮が浸透して来ているけど、いまの時代について思うことはある?

「自分はバイセクシャルだし、周りにもLGBTの子はめちゃくちゃ多いし、その中には悩んでた子もいたし、そういう子たちにとってはいい時代に進んでるなって思うけど、めちゃくちゃ時代遅いなーって感じ。メイク男子とか取り上げられてたけど、自分の中ではそれも腑に落ちなくて。そういうの取り上げる=男はメイクしないものって固定概念が隠れている気がして。なんかまだまだ遅れてるなって。全然時代がついてきてないな〜って感じです。なんやろな、自分は偏見を撲滅したいとかは思ってないです。その人が無理なものは無理だし、好きなものは好きだし、人を傷つけるのはよくないけど、気持ち悪い、受け入れられないっていう人の考え方を変えようとは思わない。
仕方ないことだとも思うんですよね。だって、同じ世代の中でも意見が食い違ったり考え方が違ったりするんだから違う時代を生きた人と考えが違うなんてあたりまえ。言っちゃえば十人入れば十人全員違う考え方だと思うんですよ。世代性別問わず」

「よく、尊敬してる人や憧れの人はいますかってフォロワーさんに聞かれるけど、小さい頃から憧れてる人もいないし、考え方とか尊敬する人はもちろんいるけど、あの人になりたいとかこうなりたいとかはないですね。最近思うのは、人に干渉しすぎっていうか。SNSでいろんな人を見れるのはいいことだけど、いろんな人の生き方やファッションが見える分、影響を受けやすくなってると思うんですよ。それがいい方向にいくこともあれば悪い方向にいくこともある」

「女やから男やからとか誰が決めたん?自分自身なんですよ、性別は」大阪・アメ村で異彩を放つ男子高校生の美学(魔主/18歳)

「成長するにつれ、大人から、ああしなさいこうしなさいと周りからの偏見で自分の我とか、やりたいこととかありたい姿とかがすり減っていって量産化していくんだと思います。それが悔しいし、自分はそういう風にはなりたくないのは大前提にあるけど、そうならざるをえないタイミングもあると思う。それがいまの自分の課題とも思ってます。きっと大人世代のなかにも、自分だけの考え方で生きてきた人もいるだろうし、上の世代はみんな古い考えだって括るつもりもないし。だからこそこの世の中は面白いし、自分を貫きながらも交わって、色々な人の意見を聞いて相手も自分も成長していくと思います」

性別は自分自身。自分のスタイルを持ち、自分の言葉でハッキリと言葉を述べる魔主。

彼のInstagramからは、強さや己を貫く気持ちが伝わってくる。真っ直ぐに自分と社会を見つめ、前に進む彼の姿に、性別年齢問わずきっとエンパワーされるだろう。これからもこの先もInstagram越しで彼を見ている私は、魔主がさらなる歩みを進める先に、より強いメッセージ性とインフルエンス力を持つ人物になることを信じてやまない。

BACK TO ARTICLES