紙版TOKYO VOICE vol.9が、1月29日から全国で配布スタート。今号の特集テーマは「好き」。発行に際して、編集長の山若マサヤからのメッセージ。
ルー・リードの『Walk on the Wild Side』という曲がある。ドラァグクイーンやスピード狂みたいな、いわゆるアウトサイダーたちが次々に登場して、「よお、危ない方の道を歩こうぜ」と口々に誘いかけてくる。そんな曲だ。今回の号の制作中、僕はテーマソングのようにこの曲を聴き続けた。

今回の号で、僕たちが考えたのは「好き」という思いに向き合う生き方だ。誌面に登場するのは、例えば、メイクアップアーティストとして活動する僧侶、東京育ちのインドネシア人の女の子、無人島でヒグマと暮らした作家、テレビ嫌いのテレビディレクター、スターを目指し上京した青年……。SNSで透明化され、頭を出すと簡単に叩かれる時代に、無意識の自己規制を乗り越えて自分らしく生きる人は魅力的だ。誌面に登場するひとりひとりの声から、そんな「好き」に逃げずに向き合う生き方が見えてくる。

年齢も仕事も境遇も様々な彼・彼女たちは、選ばれた成功者に見えるだろうか? その答えは、読んでもらえればすぐにわかる。みんな何者でもなく生まれ、迷い、きっと最後には等しく死んでいく。画面の向こうの有名人も、さっきあなたの横を通り過ぎた知らない誰かも同じだ。もちろん、僕も、今これを読んでいるあなただって。誰もが今からやり始めていい。充電が切れた瞬間消える世界に振り回されて、縮こまっている場合じゃない。

僕はこの号を通して「もっと、やっていいんだ」と勇気をもらった。そして、出会った人々を通して、こう思うようになった。現代のワイルドサイドは、遠くの脇道を探すことではなく、目の前の真正面を突き抜ける勇気のことかもしれない、と。

TOKYO VOICEの中に、あなたにも響く言葉が、あるいはあなたの心のどこかに留まって迷ったとき背中を押してくれる言葉が、きっとあるはず。そして、あなたの明日が少しでも面白いものになれば、そんなに嬉しいことはない。
TOKYO VOICE編集長
山若マサヤ
TOKYO VOICEの配布場所はこちら。
全国300箇所以上で無料配布中。