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「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―

TOKYO VOICE本誌で連載の始まった「TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY」。日常を旅するクルマ・ジムニーに乗って、人に会いに行くこの企画、本誌と連動したWeb版では旅の写真と、旅で出会った人の声を掲載します。第1回の目的地は、栃木県・黒磯。APIO JIMNYの代表を務める河野仁さんが、旅とコーヒーを愛する人を尋ねます。

●聞き手:河野仁(APIO JIMNY)

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―

コーヒーが好きなわけじゃなくて
コーヒーのある風景が好きだった

「来たねえ、わざわざこんなところまで。黒磯は寒いでしょう」

出迎えてくれたのは、栃木県の黒磯で「1988 CAEE SHOZO」を営む菊地省三さん。カフェの聖地とも言われるこの店が生まれたのが、32年前。今ではショウゾウさんのカフェの他に、ライブを行う音楽室に雑貨屋。隣には本屋にレストランと、カフェを中心に個性的な店が集まっている。

「今はこの通りで18軒くらい。僕が作ったのは2、3軒ですけどね、いろんな人がお店やってますよ。元スタッフが『この通りでやってみたい』『いい街にしたいね』って近くで始めたところもあるしね。お花屋さんやったり、ヴィーガンのレストランをやっている人もいるし。でもね、ここを始めた30年前は本当に静かだった。何にもなかったんですよ」

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
都内から黒磯までは約2時間半。

APIO JIMNYの河野仁さんは、約30年前このカフェができてまもない頃によく通っていたという。

―30年ほど前は、このあたりはシャッター街みたいな感じで。この店以外に行くところがないような印象でした。

「僕はね、いい街の条件って何だろうって、ずっとそんなことを考えてたんですよね。せっかく住むならいい街に住みたいじゃないですか。そしたらまずカフェがあって、その周りに色んなお店ができてきたら、人が訪れたいって思うんじゃないかなって。そうしたら、そこはいい街ですよね。今日もほら、こうしてみんな来てくれてるし。ハハハ。ほら、寒いからコーヒーでも飲んであったまって。甘くしておきましたから。カフェオレ」

―いただきます。ああ、おいしいですね。テイクアウトでコーヒー買ってクルマに戻ったとき、10分経っても、コーヒーの香りが車中に充満してて、感動しました。

「コーヒーはそういうのがいいよね。何でもないことだけど、コーヒーが美味しいてだけで、ああ幸せって。コーヒー豆は土地の空気を吸うからね。那須の空気がふわっと。僕は最初、特別コーヒーが好きで始めたわけじゃないんですよ。コーヒーがある風景が好きだっただけでね。でもね、32年間やってるうちに、本当に美味しいコーヒーって幸せなもんだなぁって」

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
SHOZO CAFEへの道中に見つけた裏道へ。
「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
黒磯の山々を臨み、走る。旅の高揚感が高まる。

やりたいことは
自分で決めないといけないんだ

ショウゾウさんが生まれたのは、この店から15kmくらい先の山のふもとだという。茅葺き屋根の一軒家で、農家の息子として生まれ、高校を卒業したあとは海上自衛隊に入ったという。

―どうして、海上自衛隊に入ったんですか?

「高校卒業した時に何かしたいけど、何していいかわからなくて。わかんないよね、田舎に育ったら。農家の息子で何も知らないで世の中に出てきたんで。その時好きなこと何って考えたら、バイクで海行くのが好きだったから、それで海上自衛隊に入ったんですよね。行ってる間に何か見つかるだろうって。4年間いたんだけど、やっぱり見つからないんですよ。ああ、これは自分で決めないといけないんだって」

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「明治屋」の古い建物と盛大な湯気に誘われクルマを停める。
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湯気の正体は温泉まんじゅう。地元の小豆で手作りした自家製

―それからどうしてカフェに行き着いたんですか?

「何か自分から始まる事をやりたいなって思ったんですよね。どこかに勤めるんじゃなくて、小さくてもいいから、自分から始まる物語があれば、満足感が得られるかなって。それで店をやろうということを決めて。人が集う空間を作りたかったんだよね。そういう場所にはコーヒーがあるでしょう。その一番シンプルなもので、お店を作ってみようって思ったんですよ」

―こういうリノベーションのカフェっていうのは、当時はなかったですよね。ショーゾーさんの影響を受けている店って本当に多いと思いますよ。

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
1988 CAEE SHOZO に到着。開店は11時。

「うちに来た人は、『これなら自分でもできそうだぞ』って思うんじゃないかな、多分ね。この場所でこれが出来るなら、自分の街に帰ってやってみようって。そういうエネルギーを伝えられていたなら、嬉しいことですよね。僕も始めた頃は毎日わくわくしてね、不安なんて感じなかったですよ。楽しくてしょうがねえやって。次来たらどうやってびっくりさせてやろうかって。『菊地くんは遊ばないんだね』って言われて『俺、毎日最高に遊んでるんだけどな』とか思いながら。」

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
カフェの2階の一角。
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場所ごとにがらりと空気が変わる。

風が通る場所じゃないと
いい店をつくるのは難しいんだよ

―例えば水曜に来て、その週末にまた来たらレイアウト変わってるんですよね。それに感動しました。来るたび違うから。

「お店って、感動させたくて始めるんですよ。来た人の気持ちがブワーっと広がる瞬間とかね。それには自分が感動しないとダメですよね。だから毎日模様替えしてね。日々変化しているのが楽しくてねえ」

―2階の椅子なんて、色も形も全部違うのに、調和が取れてるというか不思議ですよ。

「最初の1年くらいは上で寝泊まりしていたんです、寝袋で。住んでみるとね、家具と建物のバランスが分かってくるんですよ。それで2日くらいしたら気が変わってくる。例えば花瓶か何か置いてあるでしょう。窓を開けて、ちょっと置き直してみる。風が通るっていうのかな、少し置き直すだけで、物が生き生きとしてくるんですよね。やっぱり風が通る場所じゃないと、いい店をつくるのも難しいんだよね」

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
一見バラバラの家具たちが、不思議な落ち着きをうむ。

―デザイナーなんかがSHOZO CAFEに来ると、みんなすごいすごいって言ってましたよ。そのデザインセンスっていうのは、どう身につけたんですか?

「僕は海外に行ったわけでもないし、何も知らないんだけど、でも例えば、山が紅葉するでしょう。そんなところバイクで走ってると、木が全部バラバラで色も違うのになぜか気持ちいいですよね。そういうのを見てきてるから。あと農家の息子なんで、親があるもので何とかして暮らしをやるんだよね。与えられたもので最善を尽くすの。それを見ていたので、お金はなくてもあるもので何とかするっていう、そのスピリットがあるんですよね」

行きたいカフェがある
たった10分かもしれないけど
それも旅だよなって

ショウゾウさんは、カフェを作る前に、地元を離れて旅をして色々な街を見てきたという。そして、地元をいい街にしようとカフェをつくりはじめた。「旅がなければ、こんな人生になってない」とショウゾウさんは言う。

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―
甘いカフェオレ。カップのロゴマークはショウゾウの“ゾウ”。

「例えばね、休みの日に疲れちゃって午前中寝ちゃうとするじゃないですか。お昼すぎて何となく2時になっちゃって、今日がもう終わっちゃうような寂しい気持ちになるでしょ? そういう時に行きたいカフェがあるだけで『今日は何もしなかったけど、カフェに行ってみよう』って、そう思った時から気持ちがふと軽くなるんですよね。もしかしたらたった10分かもしれないけど、それも結構旅だよなって思っているんです」

―僕も昔は日常を離れることこそ旅だと思ってたんですけど、そうじゃないよなって。例えば偶然見つけた古い食堂に入ってみたり、今日はちょっと裏道を通って行こうとか。そういった日常にも旅感はありますよね。

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―

「そういうのがいいよね。普段の生活にも旅心はあるし、知らない国に行くのもそれはそれで大きな旅だし。裏道走るのに、ジムニーはいいよね。乗った時から遊んでる気分になるんですよね」

―ジムニーは小さくて機動力もあるんですよ。面白そうな裏道があったとしても、高級車や大きな車じゃなかなか。ジムニーならちょっと傷入ってもいいやって思えるから、躊躇せず行ける。

「森の中でさ、道のない木と木の間を走れるのもいいんだよね。昔、僕も乗ってたんですよ。今乗ってるのが調子悪くてさ、修理出してる。またジムニー乗ろうか、ハハハ」

●今回訪れた場所

1988 CAEE SHOZO
栃木県那須塩原市高砂町6−6
電話: 0287-63-9833

「コーヒーが好きで始めたわけじゃない コーヒーがある風景が好きだっただけ」 TRAVEL IN THE LIFE with APIO JIMNY#1 ―黒磯のショウゾウさん―

制作協力 APIO JIMNY 
www.apio.jp

The Voice KIkuchi Shozo
Interview Kohno Hitoshi
Photography Nanasaki Yuri
Edit Yamawaka Masaya
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