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「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)

私が彼女の姿を初めて見たのは、2年ほど前。
コロナ禍で暇を持て余し、ひたすらにYoutubeを漁っていた時に、偶然レコメンドされたのが「【三茶はしご酒】三軒茶屋にて女1人で飲み歩いてきた!」という動画だった。
自分と同年代に見えるきれいな女性が、見慣れた東京の街で1人、逞しく飲み歩く様子が印象的で、「この人と友達になりたいな」と思った。それは、テレビに出る有名人に対して抱く感情とは全く異なっていて、そこから彼女の動画を継続的にチェックするようになった。
彼女の動画は、ひとことで言うと、飾り気がない。どこまでも日常で、特別なインパクトはないのだけれど、心に残る。なぜ彼女の動画にここまで惹かれるのか、自分でも言語化してみたくて、私は彼女に会うことにした。

彼女の名前は「詩織」。

2020年から、「しおりのなんとなく日常」というYoutubeチャンネルを開設し、様々な街を舞台に1人で飲み歩く動画や、世界各国を旅する動画、和室6畳の部屋で一人暮らしをする動画など、日常をありのままに映し出した作品を投稿し、28万人の登録者数を誇る。

メールで取材を申し込むと、「恐縮ですが、是非」とお返事をいただいた。

「静止画の撮影は初めてで緊張するから」ということで、詩織さんができるだけリラックスできるように、普段からよく行くという新大久保で取材をすることにした。

文化の壁を颯爽と飛び越えて、誰とでも友達になれる

「新大久保」といっても、詩織さんが足繁く通うのは、若者で溢れる韓国エリアではなく、アジア系の食料品店や飲食店が立ち並ぶ、通称「イスラム横丁」。

新大久保駅を出て、すぐの角を1つ曲がっただけなのに、ここが東京かわからなくなるほど、道行く人たちは国籍豊かだ。

私たちがキョロキョロしながら歩いていると、詩織さんはふらーっと先を歩いていき、アジア系の店員さんたちに躊躇なく話しかけていた。もちろん初対面のはずだが、ご近所さんくらいのテンションで、するっと輪の中に入っていき、あっという間に友達になってしまう。

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
アジア系の人たちが日常生活を送る、ローカルでディープなエリア
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
普段日本ではなかなか目にしない、珍しい野菜が並ぶ
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
撮影を申し出ると、快く受け入れてくれた優しいお母さん
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
シャイな店員さんも顔がほころぶ

店先にあった見覚えのない野菜を手に、「これ、何て言うんですかー?」と店員さんに質問したと思ったら、次の瞬間には、笑顔でツーショットを撮る仲に。

「これ、めっちゃ甘いんですよね。この前ネパールに行って食べたんですよ!」

彼女が「ネパールに行った」と口にした瞬間に、店員さんの表情もパッと明るくなって、「すごいねー、ネパール行ったの!」と話が盛り上がる。

先ほどまでの緊張は何処へやらという感じで、ずっと前からこのコミュニティにいたかのように自然に会話を楽しむ姿は、見ているこちらも気持ちよくなるくらい、生き生きとしていた。

気が付けば、カウンターで隣になった男性から、「パニプリ(インドのおやつ)」をお裾分けしてもらっていて、インド語で「おいしい」は何て言うのか、レクチャーを受けていた。

「コミュニケーション能力」と言ってしまえばそうなのかもしれないけれど、ここまで瞬時に異文化に馴染める人はなかなかいない。

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
「世界で一番甘い」と言われるスイーツを食べて、「これはやばい」と苦笑い
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
「ここのパニプリうまいんだよ」と言いながら分けてくれた

「両親を尊敬してると心から言える、そういう風に育ててくれたことに感謝」

少し歩いて、「現地の人しか行かないような、ディープなお店が好きなんです」と語る彼女のおすすめで、ネパールの窯焼き料理店「ラトマト」に向かった。

猛暑の屋外から逃げ込んで、まずは冷えたビールをぐびり。

「本当にいつもおいしそうに飲みますよね」と声をかけると、「本当においしいからだと思います」と笑う。

「私、全部顔に出ちゃうからだめなんです」と言いながら、運ばれてきたネパールカレーのプレートを食べ始めた。

「この真ん中にあるのが『ディド』って言って、ネパールの田舎でお米の代わりに食べられている主食なんです。ちょっとねっとりしてて、ごはんよりも手で食べやすい。しかも何がすごいって、このカレーとかスープとか、おかわりができちゃうところ。ついこの前もネパールに行ったんですけど、現地では『ストップ』と言わないと、エンドレスで注いでくれるんです。お皿の上にあるものを、全部ごちゃ混ぜにして食べるのもおいしくて、上から見るとパレットみたいになってきれいなんですよ。」

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
グラスも用意してもらったけれど、いつも通り瓶から飲むスタイルで
注文したのは「ラトマトダルバトセット」
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
ほかほか湯気が立ち上るディドに手をダイブ
このお店は、以前アルバイト先で知り合ったネパール人の友達に教えてもらったそう

そう解説しながら、ネパール人と同じように、手で食べ始める。
私は手でカレーを食べたことがないけれど、恐らく詩織さんほど上手にできないだろうと素人でも分かるほど、器用に、そしておいしそうに食べ進める。

「小さい頃は食に興味がなかったんですけど、その反動なのか、今は食べ物に目がなくて。日本にいても、海外にいても、つい食のことばかりになっちゃうんです。」

カメラマンが沖縄出身だったので、「沖縄にはやぎ汁という料理があって、沖縄の人でもなかなか食べられないくらい癖が強い」という話をすると、「えー!食べてみたいです! そこに文化があるなら食べてみたい。そういうのを全部食べて死にたいんです」と目を輝かせる。

詩織さんにとって、食と文化は、切っても切れない深い繋がりのようだ。

「海外に行くようになったのは、仕事で各国を飛び回っていた父の影響で、幼い頃から色々な国によく行っていたのが大きいと思います。父は人の心を動かしたり、感動させるのが上手な人なので、私もそんな大人になりたいと思って生きてきましたね。子供みたいにわんぱくな父を、ずっと支えている母のことも尊敬しています。どれだけ愛が深い人なんだろうって。母にそう話すと、『大切なのは原石みたいな人を見つけて、磨くことよ。磨き続けていたら、お父さんのように宝石になるんだから』と言っていました。2人を見て育ったおかげで、恋愛に対する自分のハードルが高すぎるのには困っていますが(笑)、両親を尊敬してると心から言える、そういう風に育ててくれたことに感謝しています。」

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
家族とは今でも仲良しで、何でも話してしまう間柄だそう

自分と相手が違うことを、「面白い」と思って生きてきた

「Youtubeを始めたのは、コロナがきっかけ。友達に会えなくなってしまったから、皆への近況報告のつもりで、本当に軽い気持ちで始めたんです。それが今はここまで大きくなってしまって、正直自分でも気持ちが追い付いていない部分はあります。『登録者数何万人』とか『有名になって稼ぎたい』とか、そういう欲が全くないので。でも、少なからず世の中への影響力があるなら、自己満足かもしれないけれど、誰かに何か『あたたかいもの』が届いたらいいなと思って、そういうエッセンスを動画の中にきゅっと入れられるように、毎回格闘しています。」

そもそもが友達に向けて作り始めた動画だったから、1人の視聴者として動画を見ていた私も、知らぬ間に「詩織さんの友達の目線」になっていて、「この人と友達になりたい」、むしろ「友達になれそう」と感じたのかもしれない。

コロナ禍を経て、最近では海外旅行の動画も頻繁に制作できるようになってきた。

「海外を体験すると、正直日本は刺激が少ないと思う時もあります。でも、海外と同じくらい日本も好きだから、帰ってきたくはなる。安心できる場所があるからこそ、思い切り外に行けるんだと思います。あと最近感じるのは、日本のパスポートって本当に有難くて、どの国に行っても信頼してもらえる。それは、今までの日本人が積み重ねてきた証だと思うので、そこへの感謝は忘れちゃいけないなと思うし、自分が海外に行くときも、日本人の代表として、海外の人にできるだけ良く接したいと思っています。」

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
「動画を見てくれている人には、気楽に見てほしいから、そういう自分の熱い気持ちはあまり表に出したくないんです」と言いながら語ってくれた
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
自分のことを誰も知らないであろう場所で、自分とは違う文化を持った人たちの生活に触れることが好きだと言う
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
ここでも、「おすすめは何ですか?」と話しかけて、店員さんと相談の上、何を買うか決めていた。
「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
馴染みのお店が火災に遭ったことを知り、その場にいたスタッフに「応援してるね」と声をかけてグータッチ

様々な国で、多様な文化に触れてきた詩織さんに、「どんな世の中になったらいいと思いますか?」と聞いてみた。

「色々な国の人たち、色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいいなって思います。全員が同じ方向を向いて進むのは難しいと思うんですけど、 各々の文化の良さを、否定するのではなく、認め合って生きていけたらいいなって。
昔から、自分と文化や価値観が違う人に対して、『嫌だな』って思うことがなかったんですよ。だから、そういう風に感じる人もいるんだって、最近になって知ったくらい。私は、好き嫌いというより、自分と違うものを持っていることが『面白い』と思って生きてきました」

「日本は島国だし、あまり外を見なくても生きていけちゃうと思うんです。だから、私にできることとして、例えば単にお酒が好きで私の動画を見始めてくれた人が、海外に全然興味はなかったのに、自然と興味を持つようになって、『こんな国もあるんだ』と思ってくれたらいいなって。それが自分の役目かなと思っています。

実際に見たり話したり、経験しないとわからないことって沢山あると思うんです。想像だけ、ニュースだけ、 ネットの情報だけで決めつける人が多いのは、とても悲しいなと思う。 だから私は、できるだけ現地に行って、自分で感じたい。

私が感じたものを、Youtubeを通して伝えることで、誰かの視野を少しでも広げることができたら。そんな人が、あわよくば1人でもいたら、私は幸せです」

「色々な文化で生きる人たちが、同じところで笑いながら過ごせたらいい」世界を旅し、食べ飲み歩く彼女の、力強く優しいVOICE(Youtuber)
真っ直ぐに見つめる眼差しは優しくて強い

詩織さんと話していて、なぜ自分が彼女の動画を好きなのか、なぜ彼女と「友達になりたい」と思ったのか、少しだけわかった気がした。

詩織さんは、私の日常の少し外にある世界や、日常の中にあっても目を向けられていなかったものを見せてくれるからだ。

しかも、大袈裟なニュースとして伝えるのではなく、キラキラした別世界のように映すのでもなく、仲の良い友達とお酒を飲みながら「ねえ、この前さ、ここに行ってね」と話し始めるように、日常の会話そのままの距離感で発信してくれているからだ。

情報が溢れたこの世の中。知らぬ間にパーソナライズされたデータだけが手元に届くから、自分の好きなものを深掘りしたり、自分が心地よいと感じるコミュニティの中で生きることは、そんなに難しくないのかもしれない。

それが良いか悪いかではなく、詩織さんが教えてくれたのは、「そんなのもったいないです、自分が知らなかった世界を知れた方が絶対楽しいです!」ということ。

多様性が唱えられる時代だから、個性を受け入れることがどこか義務のように感じられてしまう瞬間もあるけれど、詩織さんが言う「楽しい」とか「面白い」という言葉は、もっとシンプルで、心にすとんと響いた。

「自分と違って面白い」、そう思える心の余白と豊かさを、なくさずに生きていきたい。

優しい笑顔で語る彼女の力強いメッセージは、きっと世界をより良くしてくれる。

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