TOKYO VOICE

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手に入れたいとは 思わないですね
入手できないですよ 人は

泣いててもいい 美しいから
その美しさを守りたいなって

愛と恋は全然違いますよね。だから恋と愛を並べて語ることがよく分からない。恋は動詞で、愛は名詞だと思うんですよね。愛は感情の名前で、恋は脳みそに起きている動き。セックスみたいなもんですよ。愛のない恋はあるし、恋がきっかけで愛が生まれることはあるんじゃないですか。愛は......難しいですね。それは独特なもので、混じりっけのないもの。必ずしも誰かに向けるものでもない。自分の認識1個でかたちが変わってしまうから、だから無いに等しい存在というか。憧れとか夢とか、そういうものに近いという気がする。今は恋みたいなことしてなくて、あんまり、自分を繋ぎとめる何かみたいなものが生活の中にない。ここ最近は全然人にも会ってなくて。自分からも求めなくなってるんですよ。それはやばい。世界に何か諦めようとしてるんじゃないかって。引きこもりに戻るみたいなことに近いのかもしれないけど、あの頃はそれこそ恋なんかしてないし、友だち関係もないし、手に入れたこともやったこともないことがいーっぱいあったから希望だけで生きていられたけど、今、もしそのゾーンにいっちゃったら、俺生きていられんのかなみたいな。自殺はしないっていうのは一応決めてるからそこだけは守れると思うんですけど。そこにいきたくなくて、もう少し人を好きでいたいし、大切にしたい。友だちでも恋人でもいいし、この人大切だな、自分の生活にいてくれて嬉しいな、ありがとういつも、みたいな相手が日常にいる生活ってすごく嬉しいから。

10歳でパニック発作を起こすまでもおかしいことはいっぱいあったと思うんです。発達障害って、異常なほどこだわりが強いことが多いみたいなんですけど、例えば俺の場合は食べられるものがすごく少なかった。だから、小学校の給食を全部食べられたことは1回しかなかったですね。ひとり、めちゃくちゃ厳しい先生に、食べ終わるまでお前は教室から出るなって言われたことがあって。普通だったら折れるべきなんだけど、でも俺はじゃあ死ぬまでここにいますみたいな。自分のルールとかポリシーがあって、乱されたくなかったんです。それを乱すヤツ、気に入らないヤツはみんな突き落とすとか、殴る蹴る、なんでもやった。だから人間関係もめちゃくちゃで。自閉症の診断を受けたときの先生は、クラスメイトにプリントとか使って俺の障害について伝えてくれたりしたんですけど、でもそれがあだになって「障害者」ってあだ名がついた。それまでも給食の事件とか多々あったから、完全にあいつおかしなやつってレッテルが張られて、まあいじめられるみたいな。腫れ物に触るような雰囲気ですよね。「文句あるなら言えよ!」みたいな言い争いはよくしてました。

自閉症と診断されてからそれを自分で受け入れるまでは結構時間がかかって。意味分からんし、みたいな。障害者手帳を持つかっていう流れもあったんですけど、そんなの持ったら俺はみんなより劣ってるって認めるようなもんじゃないか!って反発して。俺はむしろみんなよりイケてて、才能があるんだと思ってたんですよ。天才だと思って育ったので。そうやってすごく人を見下して生きてきたから、ショックを受けたのは覚えてます。家族もそれこそ腫れ物に触るような感じでしたけど、でもどうにか俺が発作を起こさないように、とは思ってくれてたんです。でも、障害を持っているから優しくしてくれてるんじゃないかってどっか思っちゃって、それがすごい嫌で毎日のようにぶつかってました。俺にとってお母さんが一番大事な人なんです。母親が病気というのもあって、ひとりの人として守りたいというのはありますね。人のために人のためにって、本当に頑張って生きてきた人で。この人が幸せに人生を終えられないなら、結末がバッドエンドなんだったら、そんな世界滅びればいいと思ってます。実家が東京なら一緒に暮らしてあげたいんですけどね・・・(続きは本誌で)

The Voice / GOMESS
Photographer / Sato Masaki
Text / Hata Renna
Edit / Yamawaka Masaya