TOKYO VOICE

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腹さえ据わっていれば
大事な部分は
流されませんから

自分がないのが
自分なんです

「自分という人間を考えなさい」と20歳の時に教わったんですね、芝居の師匠に。それで私、ノートを買いまして。開いた一番上に “渡部豪太” と書いて、右ページに「好きな物」、左ページに「嫌いな物」と書き出していったら、どちらも半ページにも満たなかったんです。焦りましたよ。けど何も出てこないんで諦めました。カッコつけて虚勢張って、20年も生きてきてこんなものかと。「俺っていう人間は、自分で考えてるより全然ダメだ」と受入れたら、肩の力が抜けまして。一度私はゼロになったんでしょうね、その時に。そこから前より “考える” ことをするようになりました。服を買う時も、たとえ靴下1足でも、できれば一生使う覚悟で選びますよね。いや、勢いで買うこともありますよ。酔っ払って古着屋行って「すげえかっけぇ!」ってレスラーパンツを買ってしまったり。ただ洋服というものは、たくさんの人の血と汗と涙の上に出来ているもので、それを我々は選んで着ていると。そういうことは忘れないようにしたいと。ことYシャツやTシャツだったりはもともと戦場での着用を目的として作られているってことを考えて着てもいいのかな、とは思うんですよね。そこまで、って感じですか? でも師匠に「自分を考えろ」って言われた時からずっと、人間って何なんだろうと私は考えているんですよ。だからそういう所にも引っかかるんじゃないでしょうか。暇なんですね、きっと。紙コップが置いてあると「何でこういう形をしてるんだろう」とか考えてしまうんですよ。私、ホントあまのじゃくでして「この赤いやつさ」とか言われると「赤に近い紫のやつね」とか、いったん咀嚼して「自分はこう思った」というのを通さないと気が済まないっていう面がありまして。我ながら面倒くさいな、と思うことがあります。

下駄は普段から履いています。言ってもまだ10年くらいのものですけれども。きっかけは10代の終わりにカナダに留学しまして、その時仲良くなった少し年上のカナダ人がいるんですけど、そいつは地元の山の名前が言えて、高さがどれくらいで、この季節にはどんな花が咲いてどんな虫がいるか全部教えてくれて。俺はその時、富士山の高さも知らないくらいだったんで、これはちょっとまずいなと。それで日本に戻ってきて、もっと自分の国のこと知りたいなと。昔からあって今でも使われているものを一度使ってみようと履きはじめたら手放せなくなってしまって。日本手ぬぐいも3本くらい常に持ち歩いてます。もし家に忘れて出てきたらショックで廃人みたいになるくらい愛用してますよ。ただの布ですけれども、人との間に布が1枚あるとだいぶ楽です。コンビニで買ったビールを包めばぬるくなりづらいし、新幹線で隣の人が気になる時は顔にかけて寝ちゃえばいい・・・(続きは本誌で)

The Voice / Watabe Gota
Photographer / Numata Manabu
Styling / ume
Hair & Makeup / atsu.co
Text / Kiuchi Aki
Edit / Yamamoto Yuki