TOKYO VOICE

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普通じゃないと言われたら
むしろ普通でいてやらない

心の一番外側が身体だと思っていて、うーん「気持ちが服を着ている」っていう感覚なのかな。例えば今日、最後に撮影したカットは、上半身は全く服を着ていない状態だったけど、私の中では、着てるんです。身体を置いている空間自体も着ているもののひとつっていう意識があって。その日の空の色だったりとかも全部含めて「着ている」っていうことなんじゃないかなって。だから同じ人間が、たとえば裸でいたとしても、水辺にいるのと森の中にいるのとこういったスタジオの中にいるのと、自分の部屋の中にいるのって、たぶん見え方はまったく違うはず。毎日の心持ちでも絶対に違う。だから着ている服が、例えば上下スウェットだったとしても、それを着ているからこそ感じるフィーリングというのか、その服が一番素敵に見える微妙な差、格好、佇まいがあると思うので。服を着ている肉体が、太っていてもいいし、シワがあってもいい。時間を経てできた身体のシワって、私はすごくカッコいいなって思うし、自分でそれを受け入れて、それを良しとしていれば、それはいいことなんだと思うんですよね。

身体が男性っていうことは、それこそヘアモデルを始めたばっかりの頃とかはあんまり言っていなかったんですけど、あるとき公にしようって決めて。ちょうど「ジェンダーレス」という言葉が流行り出した、数年前。隠してるわけじゃなかったけど、いちいち説明するのもめんどくさくて。そしたらそれを良い意味で面白がってくれる人がいて、いろんなお仕事をもらえるようになったんです。それまでは女性として見てもらいたいっていう思いが強かったから、もっと嫌な気持ちになるかなって思っていたんです。でもすごくすんなりと受け入れられた。私の中でこのことは、もちろん引き出しのひとつに過ぎないんですけど、それを増幅しやすい身体でたまたま生まれてきたわけで。それは悪いことでも何でもないと思えるようになった。そしてそれを「面白い」って言ってもらえることも、別に全然嫌なことではなかったんですよね。必要とされていることって、やっぱり、単純に嬉しいじゃないですか?

生まれてきた意義とか、別に考える必要もないと思うんですけど、やっぱり考えちゃう。そういうときに、モデルの仕事をしていて、こういう身体であることは、ひとつの意義みたいなものなのかなって。中学校は学ランの学校だったんですけど、制服は苦手でした。気持ちは女性だったから、毎日決められた男性用の服を着なくちゃいけなくて、自分にとってそれはとても窮屈なことだったんです。だからずっと、服は人を縛るものみたいに思っていて。「着る」っていうこと自体も好きじゃなかった。でも今なら、毎日、その日らしさをもって着ることができると思うんです。そう思えるようになったのは、モデルの仕事をしてから。だから、「着ること」ってなんだろう?って毎日すごく考えてる。でもたぶん、ずっとわからないんだと思います。いつか答えが出るのかもしれないけどわからなくて・・・(続きは本誌で)

The Voice / Ishizuka Yu
Photographer / Abe Yusuke
Stylist / Umeda Kazuhide
Hair&Make-up / Aika Yuko
Text / Oono Nanako
Edit / Yamawaka Masaya