TOKYO VOICE

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カクテルというのは まずい酒をおいしく飲むためのものなんです

私のマティーニは普通と同じだと思います。だいたい我々の年代ってのはジンはゴードン使うんですね。今はタンカレーですとかね。それか、そうサファイア使ったり。まあ私はどちらかというと、こう古いタイプのガシッとしているのが好きなんです。ベルモットは、フランス製のシャンベリーというドライベルモットを使います。普通、ノイリーとかノワイって言うんですけどね。ノワイがちょっともうね、この20年間で味が落ちてるんですよ。だから私は使わないです。我々バーテンダーというのは、日ごろから味見というか毒味をするわけですよね。だから名前で判断してはいけないっていうことですね。

この店を開いてそろそろ35年になりますかね。私、もともとはコックなんですよ。この場所で親父と中国料理やってたんです。それでたまたまお酒の方に興味があったんで、バーテンダー協会に電話したんですよね。 そのとき、電話口に出たのがもう亡くなった稲田春夫という師匠との出会いだったんです。「今どこに いるのか?」「ちょっと今、湯島の方におります」って言ったら、「俺は今御徒町にいるから、自分の仕事が終わったら夜来てみろ」って言うんです。それで稲田が働いていた御徒町のバーに行ったら、バーテンダー協会の本を渡されて、「じゃあお前、これを全部暗記しろ」って。それから1カ月くらい寝ずに勉強しました。お酒の歴史やリキュールの種類や、グラスの名前ですとか。必死に覚えたら、やっと「カウンターの中に入って、蝶ネクタイして良いから。でも何もさわるなよ」って言われて、「俺の仕事を見てろ」って。始めは一番簡単なグラスを洗って、磨くって言うんですけど・・・(続きは本誌で)

The Voice / Abe Katsuyasu
Photographer / Aono Tadashi
Text & Edit / Yamamoto Yuki