TOKYO VOICE

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旅に行く準備を
ずっとしてたみたいだった

なんとなく明日海外旅行に行く
みたいな雰囲気だったよね

〈夫〉去年の8月で結婚3年。この店で会ったよね。

〈妻〉友達と工事中のここを見にきてその後飲みに行ったら、松樹が銭湯が好きじゃないとか話してて。

「人前で裸になるのが好きじゃない」って。

そうそう。「なんで?」って聞いたら、「裸になることを特別にしたいから」って。そのクセのある言葉の使い方に惹かれたんだよね。すぐに「この人は私が一番仲良くなる人だ。この人にとっても私は一番の親友になるはずだ」って確信して、そう伝えた。そのあと結構近しくなって。だけど「私付き合ってる人がいるから、60歳になってふたりとも誰もいなかったら付き合おうね」って言った。そしたら松樹は「いいよ」って感じだったよね。

焦らなくても、60歳になる前に一緒になるだろうなっていう確信があったから。ゆみちゃんが誰と結婚しても今の距離は変わらないだろうって。

私が私で、松樹が松樹である限りこの距離はどんな状況でも変わらない。でも私は松樹とは付き合うつもりがなかったの。その話を友達にしたら「彼と一緒になった方が幸せになれるって分かってるはずじゃない?」って言われて、「あれ! そうだった!」 って思い出した感じだった。たぶん誰にでも、一緒にいるべき人がいるんだよね。それは自分にとっても相手にとってもいい相手。ふたりが一緒にいることが、世界にとってもいいものになるみたいな。

たぶんそれがこの世界で「結婚」と呼ばれるものなんだろうね。

家族もほんとはそういうものなのかも。でも、おなかの中にいる人は他者で、やっぱり私じゃないから、ここにもうひとり増えるのはまだ想像できない。人って魂のときは融通無碍なイメージだけど、なんでわざわざ体や言語が限定された・・・(続きは本誌で)

The Voice / Narishige Matsuki, Kikuchi Yumiko
Photographer / Narishige Matsuki, Nanasaki Yuri
Text / Iijima Aiko
Edit / Yamawaka Masaya